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Analog Synthesizer Lecture
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Kyrie Eleison の音作り

   a:概要   b:詳細

a:概要


 Kyrie Eleison は私の 1'st ソロアルバム「Kyrie : Canto Cybernetico」の3曲目に収録されています。このアルバムは以下のリンクから購入できます。


 この Kyrie eleison(キリエ・エレイソン、以後キリエと略)はデモテープ作りの中で最初に完成した曲でした。実は作ったのは1993年で、この曲と9曲目の Offertorium(オフェルトリウム)の2曲を完成させたのがアルバム制作のキッカケとなっています。


 で、1994年頃に、この2曲を各レコード会社に送ったんだけど、どこにも相手にされなかったんだけど、それから2年程たってインターネットでの販売という方法も徐々に見えて来たので「よし、んじゃ一人で全部やってみるか!」と言って1996年の年末(ちょうど12月20日頃)から作り始めたのが今回のアルバムというわけです。その間にテレビ番組の音楽が2本、ラジオ1本、ビデオ7本、アルバム2~3枚のアニメの音楽を書きつつだったんで完成までに2年半もかかってしまったわけですが...


 最初の状態ではメロディーの入ったオケを作り、それをボーカルの芳賀さんに「ミサ曲っぽいものにしたい」と歌詞と内容を相談した所、フォーレ(クラシックの作曲家)のレクイエム(死者のためのミサ曲、鎮魂曲とも言う)のキリエが丁度メロディーにぴったりはまる、という事になりこの曲の原形が完成したわけです。


 したがって最初のバージョンはレクイエムを中心とした構成になっていたのですが(もう1曲作ったオフェルトリウムもフォーレのレクイエムに含まれる)、途中でアルバムとして形を整える段階でグロリア等の曲を追加したため、キリエをレクイエム向けの歌詞ではないバージョンに作り直したわけです(グロリアは喜びの歌なわけで、それが死者のためのキリエと一緒に演奏される事はない)。


 レクイエムではないキリエの場合、聖歌集に出て来る歌詞はキリエ・エレイソン、クリステ・エレイソンの2種類しかないため、サビとかが作れなかったので、この曲だけは仕事仲間の作詞家、菊地 Lyon 真美さん(Mamik Lyon名義)に相談してフランス語とイタリア語で歌詞を付け足してもらいました。


 曲作りの一番最初のアイディアは、曲中、左右で最初から最後まで鳴っているストリングス系キーボードによるシーケンスフレーズが元になっています。これは1992年頃に買ったビンテージシンセ/ストリングスのArp Quadra(クアドラ)を弾いていて考え付いたフレーズです。たしかジャンミッシェル・ジャールのEQUINOXEというアルバムからのイメージが頭にあって出来たフレーズだったと思います。で、このパターンを弾いているうちに出来たのがキリエのメロディーというわけです。


 そんな経緯もあったので、キリエの曲中でずーーーーっと演奏されているストリングスのシーケンスフレーズは、このQuadraを使って作られています。Quadraは古い楽器なのでMidiなど付いていないため手弾きで演奏されています。この辺のテクニックは「サウンド作りの秘密」の方に掲載しておきますんで、興味のある人はチェックしてみて下さい。また、Arp Quadraについてはミュージアムに解説が載っていますから、こちらも参照してみると面白いでしょう。


 全体を通して演奏されるベースにはMinimoog(楽器の詳細は上記と同じくを参照)を使っていますが、この音には何とロシア製のAudionというコンプレッサーを使用しています。Audionは「これぞコンプ!」というくらい露骨にコンプレッションのかかる機材なので、当初アナログシンセの専門店Five-Gが輸入しました。ところがさすがロシア製だけあって、入荷したうちの半数近くが不良品!おまけに音がちゃんと鳴るものでも最初っからボリュームはガリガリで、ちょっとレベルを変えようとするとガリ!っという巨大なノイズ音が鳴るというシロモノでした。でも、音が変だから許す!


 とは言っても余りの製品のひどさに輸入はやめにしてしまったそうで、日本に現存するAudionは最初に入荷したうちのまともに動いた10台程度だけという話です。


 曲の中間部に出てくるソロはMinimoogを使って演奏していますが、さすがにブット音がしています。フレーズ的には(リック・ウェイクマン+キース・エマーソン)/2といった感じでしょうか。本当は御本人達がバンドでこういうハデハデフレーズを弾いてくれれば私としては嬉しいんですが、御本家がやってくれないので、私がやってみました...てなところですね。


 また、ソロに入る前の効果音は最所は同じMinimoogの発信音でやっていたのですが、イマイチ迫力不足だったので(なんかアニメの効果音みたいになっちゃってた)、プロツールスのプラグインのリングモジュレーターを通して音をメチャクチャにしています。この辺の事も「サウンド作りの秘密」に使用前/使用後の音を入れておきますんで参考にしてみて下さい。


 さらにこの曲では音量差の問題が一番悩みの種でした。というのは曲が始まるとすぐに4つ打ちのキックとシンセパーカッション類が鳴り始め、その上にボーカルが入るわけで、この辺は目一杯レベルを上げて派手にしたかったんだけど、その後に出てくるオーケストラの小サビ部分では大ダイコやシンバル、ティンパニーなどによる大テュッティ(全員が一斉に演奏するアタックのある部分)があるため、曲の出だしをレベルマックスにしてしまうと、このオーケストラ部分で音が歪んでしまうわけです。


 この問題はレコーディング最初の段階で使用していたミキシングコンソールではどうしても解決できない問題で、コンピューター付のミックスでうまくレベルをコントロールするか、コンプレッサーで音量を歪むギリギリまで持ち上げるかしか方法が無かったわけです。で、その辺の問題とトラック不足の問題から1997年末に録音機材を全て入れ替えフルデジタル方式のプロツールスを導入しました。この機材のおかげでトラック数は増やせ、しかもコンピュミックスしながら、最新式のデジタルコンプレッサー(マキシマイザー等)が使えるようになり、問題が一気に解決したのでした。4曲目のグロリアの解説にも書いていますが、このプロツールスが無ければ今回のアルバムは完成に至らなかったに違いありません。


 ところで、レコード会社に送って相手にされなかった本作ですが、インディーズで発売してすぐに2本のコマーシャル(イタリアの服飾メーカーで映画館用)が決まり、さらにビデオやテレビのサントラとして使用され当時250万近くかけて作ったんですが、CD の販売も含めて発売してすぐにアッサリと費用回収できました。レコード会社が入ればもっと儲かったのにね、とも思ったんですが、レコード会社が入らないからこそ上手く行ったとも考えられるわけですが...



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